2011年5月28日土曜日

メモ(3776)

太陽が昇っていく。

次第に
あたりが色彩を帯びていく。

黒と褐色の大地には、
生物の気配はなく、
静かにただ存在感を増していく。

今にも消えてしまいそうな白や、
地面に落ちていきそうなほどの重さを持った白、
あるいは、黒や光り輝く橙色、
太陽に照らされてさまざまに表情を変えていく雲。

空の青色はまるで
すぐ目の前に
2次元の面のようにのっぺりと、
しかし、どこまでも吸い込まれそうなほどの深度をもって
広がっている。


ついにここまでやってきた。

日本で一番空に近い場所。


降りるにしたがい、その実感が沸いてきた。
振り返るたびに、徐々にその山の大きさが分かってくる。
そして
眼下には、雲海が見渡すかぎり広がっている。


急に、
辺りを真っ白に覆い隠す雲が通り抜けていく。

雲の全体は分からない、
しかし、そのディテールも、緻密という言葉では収まらないほど、
いくら踏み込んでもつかみ取れない。
まるで、水の分子を見ているような気になる。

そうしているうちに、
あたりがはれ、
再び、圧倒的なスケールが迫ってくる。


あそこは確かに、
富士山頂だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿